2012年3月28日水曜日

オーシャンクリニック/東洋医学/02.気血精津液



 気は人体に対してきわめて重要な作用をおよぼしており、さまざまな部位に分布しています。また気は、その種類によってそれぞれ独自のはたらきをもっていますが、それらの主な作用を概括すると、次の5つにまとめることができます。

[推動作用]
 人体の生長・発育、各臓腑・経絡の生理活動、血の循行、津液の輸布は、すべて気によって推動されています。気虚となり推動作用が減退すると、生長・発育の遅れ、臓腑・経脈の機能減退、血行の停滞、水液の停留などの病変が現れます。

[温煦作用]
 全身や各組織を温める作用です。人体が正常な体温を維持することができるのは、気の温煦作用の調節を受けているからです。気の温煦作用が減退すると、畏寒怯冷(異常なほど寒がる)・四肢の冷えなどが現れます。

[防御作用]
 気には肌表を保護し、外邪の侵入を防ぐ作用があります。また外邪がすでに人体に侵入してしまった場合、気はこの病邪と闘って外へ追い出し、健康を回復させるようにはたらきます。

[固摂作用]
 気の固摂作用とは体液が漏出するのを防ぐ作用で、血液が脈管の外に溢れないよう制御するはたらき、汗や尿の排出をコントロールするはたらき、あるいは精液を漏出させないようにするはたらき、などを指しています。

[気化作用]
 気化という言葉には2つの意味があります。1つは気・血・精・津液のあいだの化生を指します。例えば精は気に化し、気は血に化します。この作用を気化と呼んでいます。もう1つは、臓腑のもつある種の機能を指します。例えば膀胱のはたらきである排尿作用は「膀胱の気化」と呼ばれており、三焦のもつ水液代謝作用は「三焦の気化」と呼ばれています。尿・汗などの物質の産生と代謝に関与する作用です。

 以上、5つの作用はおのおの異なった性質をもちながら、互いに密接に関わりあい、相互に助けあって作用しています。

■ 気の運行


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 人体の気は、高い活動性をもった精微な物質であり、絶えず動いて全身をめぐっています。その運動形式は気の種類によって異なります。気の運動の基本形式は「昇・降・出・入」の4種ですが、これは人体の生命活動をシンボリックに表現したものです。気の昇降出入の停止は、生命活動の停止を意味しています。
 『素問・六微旨大論』にあるように、「出入がなければ、人体の成長・発育・老衰もありえない。昇降がなければ、生成されたものを体に収蔵することができない」のです。
 昇・降・出・人という表現は、臓腑おのおのの機能、さらに臓腑間の協調関係を具体的に説明する言葉でもあります。例えば肺は呼吸を主っており、宣(宣散作用。全身に散布するはたらきをいう)と降(粛降作用。静かに降ろすはたらきをいう)の作用があり、吐故納新(古い気を吐き、新しい気を納める)を行っています。また臓腑問の関係としては、肺は呼気を主り、腎は納気を主っています。心火が下降するのに対し、腎水は昇り、脾気に昇の作用があるのに対し、胃気には降の作用があります。
 このように臓腑おのおのの機能が協調的に作用しあっていれば、すなわち臓腑の気の昇降出入が相対的にバランスよく行われていれば、正常な生理作用を維持することができます。
 ところが気の運行に滞りが生じたり、乱れて逆行したり、昇降出入がうまく行われなくなったりすると、五臓六腑や身体の上下・内外の協調関係と統一性に影響がおよんで種々の病変を引き起こします。例えば、肝気鬱結・肝気横逆・胃気上逆・脾気下陥・肺炎宣降・腎不納気・心腎不交などは、気機の失調によっておこる病証です。

B.血

 血は脈管中の赤い液体で、主として水穀の精微から化生されてできます。血脈には血液が外に漏れないようにするはたらきがあることから、「血府」とも呼ばれます。血は心が主り、肝に蔵され脾がこれを統摂することによって脈管中を循行しています。血は人体の各臓腑・組織・器官を濡養(栄養)しており、人体にとって不可欠な栄養物質です。

■ 血の生成


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 血液は、中焦の脾胃により生成されます。飲食物(水穀)は胃に受納され、脾で吸収・運化されることによって水穀の精微に変化します。そのなかの精気と津液が脈管内にしみこみ、変化して赤色の血液になります。このほか、営気は津液と化し、心脈の中に注入して血に変化します。さらに精と血とのあいだには互いに転化しあう関係があり、精は血に変化します。このように血は水穀の精微・営気・精髄を基礎物質とし、これらから脾胃・肺・心(脈)・腎・肝などの臓器の機能により生成されています。

■ 血の作用

 血は全身を循行し、内は五臓六腑から、外は皮肉筋骨にいたるまで全身の組織・器官に栄養分を供給し、滋潤� �るようにはたらいています。この作用の人体におよばす影響は、眼の機能と四肢の運動能力に最も顕著にみることができます。血によって眼が滋養されれば物をよく見ることができ、足が滋養されれば正常に歩くことができ、掌が滋養されれば物をしっかりと握ることができ、指が滋養されれば、しっかりとつまむことができる、という具合です。
 また血の滋養を得ることで、筋骨は強くたくましくなリ、関節はスムーズに動きます。血が不足して充分に栄養が供給されなくなると、眼は乾いて動かしにくくなり、視力は減退し、さらに関節の動きが悪くなり、四肢のしびれ・皮膚の乾燥やかゆみなどの症状が現れます。
 また血は精神意識活動の基礎物質であることから、「神は気血の性となす」といわれています。気血が充足していれば、意識は明晰で、精神活動も充実していますが、不足すると精神・神志の病変が現れます。そのため心血虚や肝血虚になると、驚悸・失眠・多夢などの神志不安による症状が現れやすくなります。

■ 血の循行


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 血は脈管の中を循行して全身を休みなく循環し、各臓腑・組織・器官の需要にこたえています。
 血液の循行は、内臓の共同作用によって正常に保たれています。「心は血脈を主る」といわれていますが、これは心気の推動作用が血液を循環させる原動力となっているためです。全身を循行している血脈は、すべて肺に集まり、肺気の作用を受けた後、また全身に散布されます。血液の循行は肺のほかに、脾気の統摂と、肝の蔵血作用および疏泄作用によっても調節されています。このように血液の運行は心・肺・肝・脾などの内臓の機能と関連して行われているため、その内のどれかの臓器に機能失調がおこると、血行に異常が生じやすくなります。例えば心気虚になると、血行の推動力低下の現れとして「心血瘀阻」が生じます。また脾気虚のために統血作用が弱まると、血便・崩漏・皮下出血などの症状が現れます。

C.精

■ 精の生成

 精はもともと両親の精が合体してできたもので、この精がなければ,人間として誕生することはできません。まず精が生じ,それによって身体が形成されるのです。この両親から受け継いだ精を特に「先天の精」といいます。精は腎に蔵されています。腎の一番重要な作用は精を蔵することです。しかしこれだけではすぐに無くなってしまいますから、飲食物から変化した後天の精の供給を受けます。

■ 精の作用


 腎に蔵されたを精を腎精といいますが、腎が蔵する腎精にも陰陽が存在します。陽の精(真陽・腎陽・命門の火)が陰の精(真陰・腎陰・腎水)を熱することで、腎精が働きを帯び、それを腎気といいます。腎気は命門から臍下にある丹田に送られ,そこから三焦を通って全身に運ばれていきます。腎気は原気とも呼ばれ,身体のありとあらゆる所に運ばれて、その発達と維持に関与しています。特に腎気が三焦を通じて五臓六腑に送られると、同じく三焦経由の津液と経脈経由の気血の供給を受けて、各々の臓腑は各々の精(陰陽あり)を造り、その精が各々の臓腑の気となります。ですから腎気が不足することはとりもなおさず五臓六腑全体の危機といえます。したがって精は人体を構成し生 命活動を発展させ維持する上で不可欠の基本物質ということができます。
 また精は気の力で血液に転化し全身を巡ります。さらに腎精は腎気となるとともに、髄に変化して、髄の海である脳や髄の府である骨に蓄えられますから、腎は脳や骨と密接な関係があります。
 腎は青年期になると、天癸という物質を腎精から作り出し、この天癸によって男女ともに生殖能力が生じてきます。

D.津液

 津液とは体内における各種の正常な水液の総称であり、また唾液・涙・涕・汗・尿などもこれに含まれます。

■ 津液の生成・輸布および排泄


 津液は水穀の精微から化生したものの1つです。水穀は胃に入った後、脾によって消化吸収されて一部が津液となります。津液の輸布および排泄は、三焦を通路とし、脾の転輪作用、肺の宣散・粛降作用による通調水道(水道を通し、調節すること)、腎の気化作用などを通じて行われています。
 胃を経て、小腸から大腸に下る水液は、小腸と大腸で絶えず吸収され、脾・肺・三焦を経て皮毛にいたります。皮毛から排泄される水液が汗で、三焦の水道を通って膀胱に下輪した水液が腎と膀胱の気化作用を受け、外に排泄されると尿となります。以上のような関連する臓腑の作用を通じて、津液は体表では皮毛に達し、体内では臓腑に注ぎ、全身のあらゆる組織・器官を灌漑し、滋養しています。
 さらに肝の疏泄作用も、津液の輸布を助けています。また津液は血液の重要な組成部分です。したがって血の循行を推動している心もまた、同時に津液の輸布と密接な関係があります。
 以上から分かるように、津液の生成・輸布・排泄というー連の過程は、複雑であり、多くの臓腑の協同作用により行われています。なかでも特に重要なのは肺・牌・腎の3臓です。臓腑に病変が生じると、津液の生成・輸布・排泄が影響を受けます。また津液の生成が足りなかったり、喪失過多になると、傷津・脱液の病証が現れます。輸布が障害されて水液が停滞すると、痰飲や水腫が出現します。こうした津液の病変は、逆に多くの臓腑の機能に影響をおよぼします。

 例:水飲が心に影響すると、心悸がおこる
   水飲が肺に影響すると、喘咳がおこる
   津液が損傷して肺が乾燥すると、咳がおこる
   津液が損傷して胃が乾燥すると、口渇がおこる
   津液が損傷して腸が乾燥すると、便秘がおこる

■ 津液の作用

 津液には、滋潤・滋養作用があります。体表に散布された津液は、皮毛や肌膚を滋潤し、体内にある津液は臓腑を滋養しています。また孔竅に入る津液(涙・悌・唾液など)は眼・鼻・口などの孔竅を滋潤し、関節に入る津液は、関節の動きを滑らかにしています。さらに骨髄に入る津液は、骨髄と脳髄を滋潤しています。

■ 津液の分類


 津液をその性状によって区別すると、澄んでさらさらしたものを「津」といい、濁ってねっとりしているものを「液」といします。津は全身を循環し、各組織を滋潤します。また、体外には涙・唾・汗などとして現れます。
 液は骨節・筋膜・頭蓋腔のなかにあって、そこで関節の動きを滑らかにしたり、脳髄を滋養しています。
 ただ津と液は水穀から化生される点では共通しており、また生理・病理的には、この2つを明確に区別できないことも多いとされます。津が不足すると液もその影響で少なくなるし、液に問題があれば津にも波及します。したがって両者を合わせて、津液と総称しています。
 津液はまたその所在部位および臓給との関連性により、五液としてとらえられています。



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